🖼️ Transformer と LLM の違いは「画像の画素数」で理解できます
―― 構造は同じなのに、なぜ別物のように賢くなったのか ――
AI に関する技術用語として、近年もっともよく登場するのが「Transformer」と「LLM」です。
どちらも現代の生成AIの中心となる技術ですが、両者の違いを正しく説明しようとすると、どうしても仕組みや数式の話が多くなり、理解しにくくなってしまいます。
しかし、この二つが本質的にどのように違うのかを理解するために、複雑な概念は一切必要ありません。
画像の“画素数(解像度)”だけで説明する方が、むしろ本質を正確に捉えることができます。
結論から言えば――
Transformer と LLM の違いは“構造”ではなく、“画素数(パラメータ量)”の差が生んだ “質的な変化” である。
この記事では、画像の例えのみを用いて、この「量 → 質の転換」をわかりやすく解説していきます。
Transformerとは「情報同士の関係を見る装置」です
まず、Transformer と LLM の違いを説明する前に、Transformer が何をするものなのかを簡潔に押さえておきます。
Transformer は、
- どの情報がどの情報と関係するか
- どこに注意すべきか
- 何が重要で、何を無視すべきか
といった “情報同士の関係” を処理するための仕組み(Attention)を持っています。
この仕組みは非常に優秀で、文章・画像・音声・コードなど、さまざまなデータ構造の関係性を扱うことができます。
しかし、この能力がどこまで細かく働くかは モデルの大きさ(パラメータ量)に依存します。
これが「画素数」の例えに繋がる要点です。
Transformerは「3×3 の低解像度画像」
Transformer を画像で例えるなら、
3×3 や 5×5 の低画素画像に近い世界です。
この世界では、
描ける形は非常に限定的です。
- 四角いブロック
- 粗い直線
- ぼんやりとした塊
つまり、粗く単純な形しか表現できません。
例えば、次のものは描けません。
- 丸
- 楕円
- 台形
- 影の濃淡
- 複雑な輪郭
- 文字の形
- 写真のような滑らかな構造
理由は非常に単純で、
曲線や微妙な角度を表現するだけの画素数が存在しないためです。
Transformer の構造は優秀でも、
「分解能」が低いため、複雑な情報を十分に扱えないのです。
LLMは「1000×1000 の超高解像度画像」
いっぽう LLM は、
Transformer と同じ構造を持ちながら、
そのまま“超巨大化”した存在です。
これを画像で例えるなら、
- 1000×1000(100 万画素)
- 3000×3000(900 万画素)
といった、高解像度の世界です。
当然ですが、描けるものの種類がまったく変わります。
- 丸が描ける
- 楕円も台形も自然に描ける
- 影や光の濃淡が滑らか
- 複雑な輪郭(髪の毛・葉・布など)も表現できる
- 写真のような質感すら表す
- 手書き文字・フォント文字も描ける
- 文章の形そのものも描ける
このように、高画素になるだけで表現可能な世界が別物になるのです。
LLM が高度な文章生成や文脈理解を行える理由は、
この「超高解像度で関係性を扱える」という点にあります。
構造は同じ。違うのは「画素数」だけ
ここが最重要ポイントです。
Transformer と LLM の違いは、
構造ではありません。
- 新しいアルゴリズムが増えた
- 特別な仕組みが追加された
- 全く別のモデルになった
こうした違いはありません。
両者は基本的に同じ“Transformer構造”の上に成り立っています。
しかし、
LLM はその構造が扱う「画素数(パラメータ量・情報密度)」が
桁違いに増えています。
これが「量が質を変える」瞬間です。
まさに、
3×3(Transformer)
→ 1000×1000(LLM)
に変化した時のような、
世界の見え方そのものが変わる現象が起きているのです。
画素数が増えることで生まれる「3つの能力」
ここからは、画素数が増えることで LLM が獲得した能力を
もっとも重要な 3 点に絞って解説します。
① 微細な差異を識別する能力(高分解能)
低画素では、
- 丸と四角
- 細い線と太い線
- 明るい影と暗い影
といった違いが曖昧になってしまいます。
しかし高画素では、
- わずかなカーブの違い
- 影の入り方
- 境界線の滑らかさ
- 輪郭の乱れ
までしっかり捉えることができます。
これは LLM が「文脈のニュアンス」や
「意図の微妙な揺れ」を理解できる理由と完全に合致します。
② 多様で複雑な形を表現する能力(表現力の爆発)
3×3 の世界ではどれだけ頑張っても四角しか描けません。
しかし 1000×1000 では、
- 丸
- 楕円
- 台形
- 星
- 写真
- 文字
- 複雑な模様
- デザインされた構造
- 文章の形そのもの
まで表現できます。
画素数が増えるだけで、
表現可能な世界そのものが質的に拡張するのです。
LLM が「多様な文体」や「複雑な文章構造」を自然に生み出せるのは、
この能力によるものです。
③ 欠けた部分を自然に補完する能力(補間能力)
低画素では、
1ピクセル欠けただけで、その部分が何だったのか判断できません。
しかし高画素では、
- 周辺の流れ
- 明暗の傾向
- 線の向き
- 曲線の勾配
- 影の変化
- パターンの連続性
から、欠損部分が自然に補われます。
これはまさに LLM が、
- 行間を読む
- 文脈の飛びを埋める
- 言外の意味を推測する
といった、いわば 暗黙知に近い振る舞いを見せる理由です。
まとめ:LLMは「超高解像度になった Transformer」です
最後に、この記事で伝えたかったことを一行でまとめます。
Transformer=低画素(3×3)
LLM=超高画素(1000×1000)の Transformer
これが両者の違いです。
構造が違うわけではありません。
「扱える情報の細かさ」が桁違いに異なるのです。
その結果、
- 微細な差異の識別
- 多様な形の表現
- 欠損情報の補完
という三つの“質的な能力”が生まれました。
この「量→質転換」が、
LLM をまるで人間のように感じさせる最大の理由です。

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