はじめに
AIの世界でよく出てくる
- ベクトル
- ベクトル検索
- RAG(Retrieval-Augmented Generation)
これらの概念は、数式だけで説明すると途端に難しく感じてしまいます。
しかし実は、香水ショップという1つの世界に置き換えるだけで、
すべて直感的に理解できます。
この記事では、
香水の「香り」を 2次元のベクトル(座標) として扱い、
AIがどのように「意味を理解し」「似た情報を探し」「答えを生成する」のかを説明します。
数学の知識はゼロで大丈夫です。
本論
🔸 1. ベクトルとは?
― 香水の“香り”を2次元座標で表したもの
AIは文章の意味を理解するとき、
文章を数値の組み合わせ(ベクトル)に変換します。
これは香水の香りを座標化するのと同じ。
例えば香水を次の2つの軸だけで考えてみます。
- 第1軸:爽やかさ(0〜1)
- 第2軸:香りの重さ(0〜10)
すると香水は「2次元の点」として表現できます。
| 香水 | 爽やかさ | 重さ | ベクトル |
|---|---|---|---|
| A | 0.8 | 2 | (0.8, 2) |
| B | 0.9 | 10 | (0.9, 10) |
| C | 0.7 | 3 | (0.7, 3) |
これで何がわかるか?
- A と C は近い(似た香り)
- B は重さが大きく違う(系統が異なる)
つまり、
ベクトル = 香り(意味)を、座標で表したもの
です。
本当のAIではこの次元数が数百〜数千になりますが、
仕組み自体はこの2次元とまったく同じです。
🔸 2. ベクトル検索とは?
― 店員が「香りが近い順」に香水を並べる行為
あなたが香水店に行って、
A の香水を差し出してこう言ったとします。
「この香りに近いもの、他にありますか?」
店員は、あなたが渡した香水の座標(例:(0.75, 3))と、
店に置いてある香水の座標との距離を計算し、
近い順に並べてくれます。
これはそのまま「ベクトル検索」。
具体的には…
- C (0.7, 3) → 距離が近い
- A (0.8, 2) → 少し遠い
- B (0.9, 10) → だいぶ遠い
という順番になります。
つまり、
ベクトル検索 = 香りの座標が近いものを探す技術
です。
AIも同じで、質問文を座標化し、
過去のデータ(文章)を座標化し、
意味が近い順にデータを返してくれます。
🔸 3. RAGとは?
― 店員が棚を調べて説明文を読み、あなたに最適な香水を選んでくれる仕組み
ベクトル検索は「似た香りを探す」まで。
しかし、あなたが本当に求めているのはこういう答えかもしれません。
「この香水の特徴をまとめて教えてください」
「似ている香水3つを比較して説明して」
「用途に合う香水を提案して」
この時、店員はただ近い香水を出すだけではなく、
- 香水のラベルや説明文を棚から持ってくる
- 香りの特徴を書かれた紙を読む
- それらをもとに「あなたに合う香水」を一つの文章にまとめる
これこそが RAG です。
AIの世界では、
- 「棚にある香水の説明文」=外部データ(ドキュメント)
- 「説明文を読む」=R(Retrieval:検索)
- 「あなた向けの文章を作る」=G(Generation:生成)
となります。
つまりRAGは、
ベクトル検索で香水を探し、説明文を読み、それを要約して提案する店員の動き
をAIで実現したもの。
🔍 3つの役割を一言でまとめると
| 技術 | 香水ショップでの比喩 | 本質 |
|---|---|---|
| ベクトル | 香水を2次元の香り座標にする | 情報を特徴量で表す |
| ベクトル検索 | 香りが近い順に香水を探す | 意味的に似た情報を探す |
| RAG | 棚から香水と説明文を取り出し、提案文を作る | 外部データを読み、回答を生成する |
おわりに
AIが行う“ベクトル化・検索・RAG”という一連の動きは、
香水ショップという1つの世界で完璧に説明できます。
- ベクトルは、香水を座標化したもの
- ベクトル検索は、香りが近い順に並べる行為
- RAGは、棚から説明文を読み、提案を作る行為
実際のAIは数百〜数千の軸で動いていますが、
本質はこの記事の2次元の香水の世界と同じです。
香水ショップを思い浮かべながら見ると、
RAGやAIエージェントの仕組みが一気に理解しやすくなるはずです。


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