はじめに
「AIエージェント」という言葉が急速に広がっています。しかし現状、多くのサービスやツールが“AIエージェント”と名乗っている一方で、研究領域が定義するAIエージェントとはまったく異なるものがほとんどです。
一方、“LLM(大規模言語モデル)”も世間では「賢いAI」という抽象的な言葉として扱われがちですが、こちらも研究領域では明確に定義されています。
この記事では、実在する主要論文や技術文書(Stanford、NIPS、Google Cloud、2025年のAgent論文など)をもとに、LLMとAIエージェントの違いを正式な定義で解説します。
さらに、比喩「北海道に行け」を用いて、両者の違いを直感的に理解できる形に整理します。
LLM(大規模言語モデル)とは何か?
研究領域では、LLMは“言語の理解・生成・推論を行うモデル”として定義されています。
✔ Bommasani et al., “On the Opportunities and Risks of Foundation Models” (Stanford, 2021/2023)
“LLMs are a class of foundation models trained on large corpora of text, enabling general-purpose language understanding and generation.”
要約
LLMは大量のテキストで訓練された「基盤モデル」で、汎用的な言語操作を行う技術方式。
✔ Vaswani et al., “Attention Is All You Need” (NIPS 2017)
“The Transformer is a sequence transduction model based solely on attention mechanisms.”
要約
LLMの基礎構造(Transformer)を定義した原論文。
まとめると:
LLM=言語を扱うための“モデル”であり、単発の入出力が基本。 自律的に動く構造は持たない。
AIエージェントとは何か?
2024〜2025年の研究で、AIエージェントは次のように定義されます。
✔ Sapkota et al., “AI Agents vs Agentic AI: A Conceptual Taxonomy” (2025)
“AI agents are modular systems driven by LLMs, equipped with external tools, memory, planning and environment interaction to accomplish user-specified goals autonomously.”
要約
AIエージェントは LLMを内部に含むシステムであり、
- 外部ツール
- メモリ
- 計画
- 環境と相互作用
によって 目的を自律的に達成する。
✔ Qu et al., “From LLM Reasoning to Autonomous AI Agents” (2025)
“Autonomous AI agents integrate LLMs with tool-use, planning algorithms and iterative feedback loops to perform tasks without human supervision.”
要約
AIエージェントは、
- LLM
- 計画アルゴリズム
- ツール利用
- 反省ループ
を統合し、人間の介入なしに動き続けるシステム。
✔ Google Cloud, “What Are AI Agents?” (2024)
“AI agents are systems built on top of foundation models, enabling goal-directed behaviour through planning, memory, and tool execution.”
要約
エージェントは「基盤モデル(LLM)の上に構築される目的志向システム」。
3つの論文がすべて一致している点:
AIエージェント=自律性を持ち、目的に向かって行動し続ける“システム”。 LLM単体はエージェントではない。
北海道の比喩が違いを完全に説明する
✔ AIエージェントに「北海道に行け」と言うと
AIは:
- 飛行機・電車・フェリーを比較
- 価格・天候・時間で最適化
- チケット取得
- トラブル時は代替手段に切り替え
- 最終目的地に到達するまで自律ループ
→ 目的達成のために行動し続ける
これは論文でいう「goal-directed」「planning」「tool-use」「loop」を全て満たす。
❌ LLMに「北海道に行け」と言っても動けない
必要なのは手順だけ:
- チケットを取れ
- 次に成田空港へ行け
- 次にチェックインしろ …
→ 人間が手順を決めているため、自律性ゼロ。 LLMはエージェントではない。
LLMとAIエージェントの決定的な違い
| 項目 | LLM | AIエージェント |
|---|---|---|
| 本質 | モデル | システム |
| 役割 | 言語処理 | 目的達成 |
| 動作 | 単発 | 反復・自律 |
| 自律性 | なし | あり |
| 手段選択 | できない | できる |
| 論文上の分類 | Foundation Model | Autonomous Agent |
おわりに
世の中には「AIエージェント」を名乗るツールが溢れています。しかし、論文の定義に照らすと、その多くは LLMに長い手順を与えているだけの“命令実行AI” にすぎません。
本来のAIエージェントとは、
目的だけを伝えれば、手段を自律的に選び、行動し続け、結果に応じて再計画する“目的達成システム”。
LLMはその中の“脳”にすぎず、エージェントそのものではありません。
この違いを理解することは、
今後のAI設計・ビジネス活用・アプリ開発・研究活動すべてにおいて非常に重要です。


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